ロマンチックバカンス★ボラボラ

the 3rd night : mermaid's seduction.



LLサイズのハードキャリーをきっちり閉めて、跡部は荷物の最終確認を終了した。
ボラボラ島最後の夜。明日は午前中にこのホテルをチェックアウトし、タヒチ本島へと移動する事になっている。
その後首都であるペパーテのホテルに二泊し、明々後日の早朝には帰路に着く。
どんなミラクルだ、としか言い様が無いこの旅行も、すでに折り返しを過ぎているという事だ。
思い返せばあっと言う間だが、何だか長い間このヴィラに滞在していた様な気もする。体感時間が大きなガラス窓から見える凪いだ海と同様、あまりにもゆっくりだからだろう。
何だかんだ文句は言ったものの、最終的には跡部自身、この旅を楽しんでいた。
米10kgへの未練は、正直まだ残るものの……このあまりに雄大な自然の前で、そんな小さい事は言いっこ無しだ。
何より格好悪い。

最低限の身の回り品のみを残し、明日着る服をキャリーの上へ二人分。
これで明日の朝、どたばたする事無くチェックアウト出来るはずだ。

二人分の準備を終えた跡部は、先程から物音一つしないバスルームへと視線を向けた。
着る予定の服だけを指定し、じゃー風呂入ってくるからヨロシク、と。
思えば二度目のセリフだけを投げて、リョーマが消えて早30分。
何故二度目かって。勿論、出発前の日本で一度聞いたから、だ。
こちらで着る予定の服を口頭で指定し、じゃ!と風呂へと向かった背中に文句を投げつけるも振り返る事はなく。
本人にやらせた所で、適当に詰め込まれた荷物に苛立ち、纏めなおすのは自分だ。それならば最初から自分でやってしまった方が良い。
結局跡部は、レンタルした一番大きいLLサイズのハードキャリーの中に自分とリョーマの分の衣服を。 もう一つのボストンバックにその他と、土産を買った時のためのスペースを残し、準備を終えたのだった。
俺は家政婦か?それとも母親か?
言いたくもなるけれど、言った所で、だ。
適当に誤魔化すリョーマと、誤魔化される自分。いや、誤魔化されてやる自分。
この立場の逆転を図るには、あまりに長く付き合い過ぎていた。

リョーマの長風呂は今に始まった事じゃないが、あまりに静かなので些か気になって来る。
初日の夜に堪能したバスソルトをいたく気に入り、フロントに頼んでまで追加させていたのだから楽しめば良いとは思う。
しかし、跡部自身もさっさと入浴したいのだ。二日目の夜、バスルームに放置する事になってしまったハーフサイズ・シャンパンを、とりあえずは冷蔵庫に 入れてある。それを空けて、このボラボラ最後の夜に乾杯して。大人しく、眠りにつきたい。
隣のヴィラでは、不二が昨晩分を取り替えそうと必死になっている頃だろうか。
ちょっとした嫌がらせ、日頃の仕返しに投げてやった言葉に、表情を凍らせていたのを思い出して一人笑う。
菊丸も気の毒にな、と少しだけ申し訳なく思わないでもないが、あくまで人事だ。

―――――よく付き合ってられるなーって偶に思うよ。

あの時の不二の言葉を、そっくりそのまま菊丸に投げてやりたいと思う。
しかし、もしかしたら返す言葉も自分と似たり寄ったりなのかもしれない。
結局の所は長く続いている、しかもあちらは、自分達よりももう少し長い。
つまりは、そういう事なんだろう。

しかし遅い……寝てんじゃねーか。
そう思いながら、バスルームの様子を伺いに行こうかと跡部が腰を上げた時、丁度そのドアが開いた。

「お先ー」

そう言って出てきたリョーマは……全裸だった。

「……下着くらい履け。忘れたのか?」

と。別段珍しい光景でも何でも無いからこそ、着替えを持って入るのを忘れたのかと尋ねれば。

「いや、ジャグジー使ってないの思い出したから入ろうと思って。水着出してよ」

と返ってくる。

「レストランに行く前にランドリー回して、とっくに乾かしてある。もう海には入らねぇっつっただろーが」
「ジャグジーは別じゃん。まぁいいや。ジャグジーも風呂みたいなもんでしょ」

そう言って、裸のままでテラスへと出て行く様を止める術は無い。
何というか……本当に、自由気侭な生き方をするヤツだ。
見張っておかないとどこに行ってしまうか分からない。
その好戦的な性格から、過去に何度も要らぬ喧嘩を吹っかけたり吹っかけられたりして来ているのを、跡部自身が身をもって知っている。 吹っかけられて、買った挙句に今もこうして一緒にいる、他でもない自分なのだから。

「あ、そーだ」

背中越しに振り返る、それはまるで絵にさえなりそうな裸体。
見慣れてはいるものの、せめてタオルくらい巻けねぇのか…!と投げつけようとしていた矢先の制止。

「シャンパンあるじゃん。持ってきて」

艶っぽく笑って消える姿に、どうしたって浮かぶのは昨晩のフラッシュバック。
何が言いたいのか……何をしようとしているのか。分かってしまうのは以心伝心でも何でもなくて、ただただ素直過ぎるあの性格が。
そして、逆らえない、逆らおうともしない自分が居て。

―――――スキモノはどっちだ。

答えは出そうにない。





薄い琥珀をフルートに注いで二つ。
仄かな音を立てて上っては割れ消える泡と、ジャグジーが吐き出す柔らかい泡は似たり寄ったりで。

「ありがと」

グラスを受け取りながらニイっと笑ってみせるのは、今日も今日とてリョーマの誘惑に、跡部が抗わなかったからなのだろう。
既に洗濯を終えてきちんと仕舞い込まれた水着を引っ張り出すのは、余りに億劫。
故に、タヒチの夜空と海に晒された跡部の体も、勿論一糸纏わず。
申し訳程度のタオルをジャグジーの手摺に引っ掛けて、リョーマの斜め向かいへと腰を下ろした。

「じゃあ……何に乾杯?」
「……ボラボラ島最後の夜に」
「それと、俺のくじ運に!」
「「乾杯」」

チンッ!と軽い音で触れ合わせたフルートは、その余韻を残す間も無いまま中身を干される。

「うまっ」
「……ハーフじゃ足りねぇな」
「早い者勝ちでしょ」

言うが早いか、掴んだボトルから溢れんばかりに注ぐ薄い琥珀は、その意外と高いアルコール度数を全く無視する男にジュースか何かと同じ勢いで飲み干されて行く。
横目で溜息。好きにしろ、とだけ呟いて視線を海へと向けた跡部は、水平線と溶け合う夜空に浮かぶ、多くの星を瞳に映す。
東京では見られない。生まれて初めての経験。
降り注ぐ様な、とは文字通りで、ここへ来てもう飽きるほどに流れ星を目にしている。
ここまで頻繁だと情緒も何もねぇな、と思ってしまうほどに。

「明日の朝は早いんだっけ」
「そうだな。…寝坊すんなよ」
「早くても遅くても、どっちにしろアンタが起こすんだから。俺はどっちでもいーよ」
「……たまには自分で起きたらどうだ」
「無理」

そう言いながらグラスを空けたリョーマは、それをそのままジャグジーの淵へと置いた。
横目に見ながら同じくグラスを置いたのは、距離を詰めるリョーマの掌が跡部の太股へと触れたからだ。
膝に膝を引っ掛ける様にして、リョーマは跡部の膝へと跨る。
浮力を利用してそれを受け止めれば、見上げるリョーマは星空越し。

「まだあと二日あるけどさ、この島は最後でしょ?…楽しかったね」
「まぁ、な」
「テニスも出来たし」
「それは日本でも出来るだろ。つーかお前、あれからジェットスキーにも乗ったくせに、疲れてねぇのか?」
「全然?……まだまだ頑張れるから期待してていーよ」

そうして落とされるキスは戯れの様に軽くて。
じゃれる様にして笑う上機嫌のリョーマを見ていると、跡部の気分も良くなってくるのだから不思議だ。
何の事もない会話でも、裸の胸をくっつけながら耳元で囁いてるだけで、扇情的な雰囲気になるもの。
その内に、リョーマの手が跡部の濡れた後頭部に添えられ髪を乱す様に動き、跡部の手がリョーマの腰に回って括れを確認する様になぞり始めて。
雄弁な濡れた視線を交わせば、吐く息の一つさえも惜しいとばかりの口付けをぶつけた。





リョーマが、視界の端に動く影を認識したのは、丁度その頃だった。
耳朶を擽る舌に目を細めながら、よく見える目が絞ったその焦点の先には、中学高校時代と、唯一同学内でリョーマより良い動体視力を持っていた男。
ばっちり合った視線に、どうやら先にこちらに気づいていたらしい菊丸英二が、慌てふためいた様子で狼狽していた。

(あーーー……)

さて、どうしよう。
こういう現場を旧知の先輩に見られたというのに、案外冷静な自分に今更ながら関心しながら取った行動は、後頭部を掻き回していた手を滑り落とし、肩に回して抱擁を固くする事だった。
頬に頬を当てて、振り返る事が出来ない様固定。勿論さり気無さのために頬に口付けを落としザラリと舌で舐める上げる事も忘れない。
腰に回っていた手がそのまま下へ降りて来て、太股の内側を撫でる。
その感覚に甘い吐息を吐きながらも、空いている片手を眼前に立てて。

(すんません英二先輩)

心の中で詫びながら、その手で今度は英二達が宿泊しているヴィラの方を示す。

(見られたの分かったら何かと面倒なんで、申し訳ないっすけど)

部屋へ戻ってくれ、と。
口をぱくぱくさせながら慌てふためいてはいるものの、彼のプレイスタイルの如し俊敏な身のこなしでジャグジーを後にするのを確認して、意思が伝わっていた事にほっとする。
しかし、見られたのが英二で良かった。もし、その相手である不二があの場に居たとしたら……部屋へ飛んで戻ってカメラを持って来るくらいの事はして来るかもしれない。いや、それは考え過ぎだとしても、面白がって格好のネタにされる事は間違いないだろう。
まぁ、もし不二が居たとしたなら、さっさと跡部の腕を解かせてその事実を伝えただろうけれど。

想像したら「有り得る」と思わず笑った口元を、拘束が緩んだ事によって横目に見た跡部が口を開く。

「…何笑ってんだ」
「んーん、別に。今頃アッチもこんなコトしてんのかなーって」

アッチ、と指したのは勿論不二と英二が宿泊するヴィラ。
英二がとっくに姿を消したそこを漸く振り返った跡部は、眉間を寄せて苦い顔をする。

「萎える様な事言うなよ……」
「だったらもっと集中させてよ。余所見する隙なんか作らなきゃイイのに」

俺だったらそうするけどね、なんて。
熱くなり始めたばかりの跡部自身を、きゅっと握り込んでしまった。

「っつ、てめ」
「元気じゃん」
「…てめーもな」

跡部もリョーマ自身を握り込み、お互いの手の中でその容積が増すのをダイレクトに感じる。
どうすれば一番気持ち良くなれるのかなんて分かり切っているのに、次の行動に移らないのは。じわじわと這い上がる快感のじれったさが何だか心地良いからなのか、この地球最後の楽園での夜があっと言う間に過ぎ去ってしまうのが勿体無いからなのか。
別々に握っていたものを一緒に。二本の手が、十本の指が、湯の中で淫らに動き、互いの性感を高め合う。
短い喘ぎを吐息の中に混じらせながら、時折交わすキスは舌先を擽って。
今にも破裂しそうなものの先から粘液が分泌される頃。

「ぁ、あ、ねっ……」
「ん…だよっ」

伏せていた視線を上げて交わせばとろりと溶けて。

「はや、くイって。ベッドで、ちゃんと…ぁ、抱いて」
「……っ、始めたのはお前、だろーが」
「だって、ん、ぁ……はっ、アンタが挿れて…くん、ぁ、ないと、俺の体っ、満足しない…って」

殺し文句。
策略か何かかと一瞬疑う悲しい性に、目の前でどっぷり濡れた表情はただ只管目の前の、そしてその次の快楽を求めて喘ぐ。

素直過ぎる男だと誰よりも知っている。
だからその言葉が、足先まで震えさせる。

「俺も早くお前に挿れたい」

耳に直接言葉を流し込んで、頷き笑う唇に噛み付いて。
我慢の必要が無いからこそあっと言う間に上り詰めスパークする視界の中で、仰いだ空の星はやはり眩く輝いていた。





「どういう風の吹きまわしだ」

眉を寄せる跡部に、リョーマは至極楽しそうに笑った。
幾度と無く交わした口付けのせいで赤く色づいた唇をゆっくりと舐め、「そんな気分だから」と端的に一言。

落とした照明の中で、唯一仄暗く灯るスタンドライトはオレンジ色。向こうが透けて見えるほどに薄い、上質なシルクレースの天蓋カーテン、その美しいドレープが、時折吹き込む柔らかい風に揺れている。
沢山の枕を背に挟み、上半身を起こした状態で。
投げ出した足に跨る様に座ったリョーマを、跡部は見上げていた。

ジャグジーで一度果てた後、荒い息もそのままにとりあえず部屋に戻った二人は、流れと衝動のまま広いベッドに倒れこんだ。
跡部としては、昨晩散々致した割に自分も案外元気だな、と頭の片隅で思いながら、そのままリョーマを組み敷いてしまおうと思っていた。
しかしどうやら、先手を取ったのはリョーマで。
跡部の肩を押し、あっさりと跨ってしまうのは、まるで今朝の再現。
ただ一つ違ったのは、今はまだ大人しいままの跡部自身を、利き手で握りながら…だった事。

基本的にリョーマは、跡部に良い様にされるのを嫌う。
と言うか、未だかつて、好き勝手を許した事など一度もない。
屈辱的な体位でのセックスは勿論、跡部がその気でも自分が違うのなら許さなかったし、それを頑として譲ろうとはしなかった。
逆に、跡部にその気が無くても自分がしたいのなら強引に事を進めた。例え跡部が、提出論文やレポートで徹夜明けであろうが、テスト中であろうが。
勿論度合いはあり、実際に無理だと分かっているのなら初めから強請ったりはしない。
けれど、跡部が多少無理をすれば可能だ、というレベルであれば。リョーマに遠慮は無かった。
我侭で自由気侭。強引で不遜で唯我独尊。
もう少し昔であれば、跡部も全く同じ様な性格をしていた。ただ、その全てにおいてリョーマの方が度合いが上だったのだ。だから、付き合って行く内に跡部が折れた。と言うか、丸くなって行った。
そんなリョーマだ。
自分が自由に動くために、跡部に跨ってしまう事はよくあるのだが。

「喜びなよ?もう当分無いから」
「……噛み締めさせてもらうぜ」

気のない様な溜息と逸らされた視線が、跡部が若干の羞恥を覚えているのだとリョーマに如実に知らせていて。
こんな顔が見られるのなら、偶にしてあげるのも良いかも。と思わせる。

小さく動かしていた手の中で首をもたげ始めていたそれに、口付ける。
ちゅ、と音を立てて離し、舌でぐるりと輪郭をなぞって。
跡部が小さく息を飲んで、見上げた先で眉を寄せている。
切なげにさえ見えるその表情は、こういう時でしか見られないレア物なのだ。
口を開いて咥え込んでしまえば、ぐんと容積を増して。
跡部の指が髪に絡まる。
それは、もっと続けろと押さえつけているのか、もう止めろと離そうとしているのか。どちらとも付かない動きだった。

「っは……ぁ、っ」

粘着な唾液が口内で溢れ、跡部の先走りと混ざってぐちゅぐちゅと音を立てている。
滴らせる事に抵抗など無い。口の端から零れるそれを潤滑油に、幹を握る手の速度も上げていく。
跡部が小さく漏らす吐息と喘ぎに、何も施されていないリョーマの腰が揺れる。
口内に頬張ったそれを、ぎりぎりまで高めてやろう。
爆発寸前まで追い込んで、その寸前で焦らして、濡れた強い瞳で、食い縛った歯を開き、跡部が懇願するまで。
そう思っているのに、どうやら自分も余裕がない。
舌と喉と。粘膜を使って吸い上げて、苦味のある汁を啜り、裏筋を刺激する様に至極緩く爪を立てる。
それらは全て、跡部にしてやっている事のはずなのに。
利き手が自身の下半身へと伸びる。
分かっていた。もう随分と熱い。腰を揺らせばシーツに擦れて、小さく水音が立つ。

「お、い……、もう、いっ…」

髪に絡まっていた指が、ついに引き剥がす様に動く。
けれどそれに抗って、先端を吸い上げたのは最早意地だった。

「ぅ、あっ……!!」

びゅ、と口内に散る精液。
覚悟していたよりもその量が少なくて跡部を見れば、これ以上無いほど眉を寄せていて。

「っん……なに、我慢して、んの?」

一度口を離して聞けば、熱に完全に溶かされた青が、ただ只管強いその瞳が、リョーマの体を縫い止める。

「言っただろ……抱きたいって」

跡部の長い指がリョーマの双丘を割り、すでに潤っているそこに突き立てる。
普段からは考えられないほど性急で乱暴な所作で、言わばおざなりだ。
けれど、一気に三本突き立てられても、ひくと喉を逸らして喘ぐのは自分。全く、どうしてこんなに。
なんだかんだで、この男の前でだけ開いて来た体だ。
触れられただけで簡単に濡れる。
その瞳に射抜かれただけで、簡単に感じてしまう。

「も、だいじょ、ぶだって……」

肩を叩いて催促。
そうして、自分から腰を浮かせて跡部自身を握った。
入り口に擦り付ける。くちゅ、と水音が鳴って、何だか笑ってしまう。

「あつ……」
「っ、言っておくが、あまり……持ちそうにないぜ」
「そしたらもっかい、その気にさせてあげるよ…全然味わい足りないんだから、」

ね。
言いながら腰を落として行く。

「ああぁっーーー……んんっ!」
「っく」

ずぶずぶと音を立てる様に飲み込んで行く。
一気に入れてしまったらその瞬間に崩れ落ちそうだと分かっているからあえてゆっくりと。
けれどそれもじんわりとした刺激を長く持たせる事になり、どっちが良かったのかなんて互いに分からない。
何とか全てを収めるまで無事に保ち、それに安堵する様に互いの肩口で息を吐いた。

「はっ、あ……」

腹の奥で感じる灼熱。
先ほどまで口内で愛でていたせいか、何だか愛しくて仕方ない。
この熱も。目の前のこの男も。

「ねぇ」

指を絡めて、その爪へと口付ける。

「今、すごく、スキ」

掠れた声で囁けば、跡部が顔を上げる。

「な…んだ、いきなり」
「言いたくなったから」
「っ意味、分かんねぇ」

戸惑っている……と言うより照れている。
左右に惑う視線を捕まえて、微笑む。

「だから、アンタもさ。めいっぱい愛してね」

きゅ、と腹に力を入れて催促。
跡部の視線が、リョーマの好きな欲に溶けた青が、ただ真っ直ぐに絡まって。

「上等だな。……初めからそのつもりだ」

ぐ、と腰を持ち上げられて、後は。
乱れるだけ乱れて、体と体で会話をすれば良い。
誰も見ていない。
広がるのは、広い広いオーシャンビュー。

星が降り注ぐ、この地球最後の楽園で。





*next morning.*